平成22年度は、超低金利・政府債務蓄積下の金融・財政政策に関する実証分析を実施するための文献サーベイとデータおよび統計パッケージの整備を主に行った。まず、「日本の長期経済統計に基づく財政政策制約要因の分析」の研究については、収集した長期統計の整理を行い、予備的な分析を実施した。その過程で、長崎大学重点研究課題「東アジアにおける最適な金融システムの研究」で主催した国際カンファレンスにおいて、国債市場の歴史的なデータの時系列分析を行っている海外の研究者と意見交換し、本課題における分析手法の再検討を開始した。これにより、戦前の日本の国債市場の動向から本研究の成果を補完することが期待できる。 また、「企業レベルのデータによる超低金利政策の波及経路の検証」の研究については、近年の実証研究を中心とした文献サーベイを行い、必要なデータを整備した。本課題に関連する実証分析をサーベイして、銀行貸出と企業の設備投資との関係に着目した年次データや四半期データに基づく実証分析のほかに、比較的高頻度の金融市場データを用いたファイナンス分野の研究も進んでいることを確認した。本課題では、後者の分析の成果も取り入れつつ前者の分析の流れを受けて、量的緩和政策による金融機関のバランスシートの変化から、企業への貸出を通じて生産活動への波及を分析する。そのために、日本政策投資銀行の企業財務データを購入してデータの整理を行い、必要な分析を行うための統計パッケージを購入した。これにより、次年度の本格的な分析にむけた準備を整えることができた。
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