研究概要 |
まず、高水準の政府債務の下での財政政策ルールの分析として、日本の長期経済統計データを利用した実証分析を推進し、その成果を2011 Institution and Economics International ConferenceとWorld Business, Economics and Finance Conferenceで報告した。この分析においては、長期の財政関連時系列データを収集し、政策ルールのレジーム変化が生じているかどうか検証した。その結果、日本の財政政策は金融政策に影響をおよぼす恐れがあり、2000年代には影響が減少したものの、2008年の世界金融危機の影響により、再び金融政策への財政の影響が強まりつつあることを明らかにした。 また、財政政策ルールに関連する分析として、『経済と経営』第91巻1-2号の掲載論文において、政府の予算制約の視点から財政政策と通貨危機の関係を分析し、2001年のアルゼシチン通貨危機の事例に適用して検証した。特に、為替平価に強くコミットするカレンシーボードの下では、財政破綻による第1世代型の通貨危機のみならず、政府の予算制約が遵守される場合も、為替相場の非決定性に由来する自己実現的な通貨危機も生じること、アルゼンチンの事例は前者にあたることを明らかにした。 一方、超低金利下の金融政策ルールの分析として、深刻な金融危機による国際資本移動の滞留がゼロ金利政策におよぼす影響を分析した。その結果、金融危機時のリスクプレミアムの上昇から、国際資本移動が収益率に反応しにくくなると、最適政策ルールとしてのゼロ金利政策が長引く傾向にあることを明らかにした。なお、この成果はWorld Business, Economics and Finance Conferenceにおいて報告後、『経済と経営』第91巻4号に論文として掲載した。
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