わが国では、これまで取得・保有・走行の各段階の自動車関係諸税を中心とした財源調達によって一般道路の整備を、有料道路料金の徴収を基礎とした財源調達によって高速道路の整備を、それぞれ行ってきた。しかしながら、主たる自動車関係諸税である道路特定財源制度は2009年に一般財源化され、また高速道路も整備管理主体であった日本道路公団の民営化を経るなかで、財源調達における上記の役割分担は不明確になりつつある。さらに、研究目的にも示してきたように、道路整備のニーズの変化、交通需要管理の必要性、課金技術の進展などを踏まるなか、いわば道路の新設を主な課題としていた時代に確立した財源調達制度を、今後必要性が指摘されている道路の維持更新を主とした時代にあったかたちに再構成していくことが求められていると考える。 昨年度は、上記の問題意識を踏まえつつ、一昨年度までに実施してきた先行研究のレビューならびに過去に実施したアンケート調査のデータを活用した「自転車走行空間の整備に関する費用対効果分析の実施」を基礎として、異なる側面からの道路空間配分の実証分析として、都市部居住者を対象としたアンケート調査を通じた「歩行者通行空間の整備の評価」を行った。 近年、交通事故死者数が減少傾向にある一方で、歩行者が交通事故死者に占める割合は状態別割合で最も高くなっている。この原因のひとつは、歩行者の通行空間が確保されていないことである。しかしながら、財政赤字の増大を考えると、道路空間の幅員自体の拡幅による問題の解決は容易ではない。このとき求められる考え方が、上述した道路空間の再配分であり、本研究で実施した、自転車走行空間と歩行者通行空間の経済評価は、道路空間の再配分、具体的には自動車走行空間から他の用途空間への再配分に関する議論の基礎となるものと考える。
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