研究期間の最終年度となった今年度はこれまでの研究の公表に努め、中国地方を対象とした中山間地域の現状と課題についてまとめるとともに、東日本大震災の被災地の産業復興について調査を実施した。研究成果として、関満博・松永桂子編『震災復興と地域産業3,4,5』を刊行した。『震災復興と地域産業3』では、被災地の道の駅が災害時の対応に加え、地域の産業復興に大きな役割を果たしていることを明らかにした。『同4』では、東北の被災地で応急的に設置された仮設商店街が産業復興や地域コミュニティの形成に果たす役割について論じている。小さな自治体の産業復興モデルとして宮城県南三陸町を取り上げた『同5』では、人口減少・過疎化が進むなかで農林水産業や中小企業の継続、復興において果たす役割について考察した。地域産業の担い手の活動を詳細にヒアリングすることによって、今後の地域の持続性という観点から中小企業や地域産業の果たす役割を検証してきた。 本研究で一貫して注目してきた中国地方の農山村・中山間地域では、人口減少に伴う社会的機能の衰退は半世紀も前に現れていた。地域全体で早すぎる超高齢社会の到来をどのように受け止め、対策を講じているのか、自治の視点と経済の視点の双方から分析してきたことが本研究のオリジナリティといえる。その点、中国地方と東北地方の被災地では地域を支える組織のありようが異なっていることに注目した。 中国地方では旧町村単位の住民自治組織の設立がここ数年で急伸していたが、東北地方の被災地では「契約講」と呼ばれる地域コミュニティが長く存続してきた。海や山の資源を共有で管理する相互扶助のコミュニティであるが、それらが震災後も雇用創出の場を形成するなど大きな役割を果たしていたこと、さらに仮設商店街など産業コミュニティが地域経済の支柱となっていることに注目し、上記の本で記述的に分析した。
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