研究概要 |
本研究の目的は,健康格差と所得の不平等との関係について,(1)人々の健康度に不平等が観察されるか否かを確認したうえで,(2)社会(集団)全体での所得の不平等度が個人の健康に与える影響と,(3)他者との所得の相対的な差が個人の健康に与える影響とに分けて,それぞれの影響を計量的に明らかにすることである. このうち,平成23年度は(1)に関する分析結果を医療経済学会等で報告した.そして,得られたコメントをもとに研究論文の加筆・修正を行い,その一部を公表した.加えて,平成23年度は(3)に関する分析も行っている.具体的には,高齢者を対象とした大規模パネル調査のマイクロデータを用いて,ある個人の高齢期のある時点における絶対所得水準と相対所得水準が3年後・6年後・9年後のその個人の健康状態にどう影響するかという分析を行っている.現時点では,絶対所得やその他個人属性,異質性などをコントロールしても,相対的に豊かでない人が不健康になることが統計的に有意に確認された.さらに(2)に関しても,所得の詳細情報を多く含む大規模パネル調査のマイクロデータの利用申請を済ませ,データを入手した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的の(2)と(3)に関しては,高齢層だけでなく若年層において,(1)社会(集団)の不平等度が個人の健康にどのような影響を及ぼすのか,(2)他人との所得の相対差(相対所得)が個人の健康にどのように影響するのか,について分析を進める.また,(1)に関連して日本のデータで得られた分析結果の日米比較をするために,ミシガン大学が行った調査"Americans Changing Lives"のマイクロデータを用いた分析可能性について検討する.
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