研究概要 |
2000年代の日本企業の研究開発(R&D)投資への金融要因や所有構造の影響、具体的には、新興企業のR&D投資における資金制約の有無、90年代後半の銀行危機以降に見られた負債の削減がR&D投資に与えた影響、90年代後半以降、増加した外国人投資家のR&D投資への影響の解明を目的に実証分析を行った。R&D集約産業に属する上場企業をサンプルにR&D投資関数を推計した結果、以下のようなことが分かった。 大規模な企業(連結資産3,000億円以上と定義)では、資金制約は確認されなかったが、主に新興市場上場の社齢が若く比較的小規模な企業(連結資産1,000億円以下と定義)においては、R&D投資に関して資金制約の存在が確認された。しかし、それら新興企業において増資のR&D投資への影響は見られなかった。つまり、資本市場がR&D投資への資金供給源として機能していない可能性が示唆される。 負債の影響に関しては、大規模企業において、R&D投資資金の一部が負債によって調達されている一方、小規模企業では、負債の増加は単調にR&D投資を減らすということが示された。外国人投資家の影響に関しては、大規模企業でも、資金制約が確認された新興市場上場企業を含む小規模企業においても、外国人投資家による株式所有が企業のR&D投資を抑制させていることを示す証拠は確認されなかった。 また、資本市場がR&D投資への資金供給源として機能していない可能性が示唆されたが、それとの関連で、資本市場からの退出行動の一つである非公開化型MBOについての実証研究を行っている。特に、買収プレミアムに着目しながら、非公開化型MBOの動機を探った。その結果、資本市場での過小評価が動機の一つとして考えられるが、そのような過小評価は会計操作を通じて意図的に作り出されている可能性が見られる。
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