本研究では、継続的に実施するアンケート調査とインタビュー調査から得られたデータ・情報を定性的かつ定量的に分析し、高度情報化時代における安心・安全社会を実現するために必要とされる企業および個人の情報セキュリティ対策はどのようなものかを明らかにすることを目的としている。 平成22年度は、研究代表者がこれまでWebアンケート(インターネット)調査によって収集・蓄積されたミクロデータを用いて、企業組織の情報セキュリティに対する労働者の意識と行動の関係に関する研究を行った。Mann-Whitneyの順位和検定の結果、労働者(個人)のセキュリティ対策に対する意識が高ければ、情報セキュリティの観点から問題ある行動をとらないことを明らかにしている。また、企業組織で全面的に禁止されている事項(データの社外持出し等)に関して問題ある行動をとる個人の意識は、問題のある行動をとらない個人より低いことを合わせて明らかにしている。さらに、業務の効率性と情報セキュリティ対策に関するトレードオフについて順位相関分析を行ったところ、労働者の意識と行動の間に関係がないことを明らかにしている。これらの結果を踏まえて、個人が対策を順守するようになるためには、情報セキュリティ教育が一つの有効な手段であることを指摘し、セキュリティ教育の内容も個人の意識を高めるようなものにする必要があることについていくつかの示唆を与えている。 分析結果等を踏まえて、平成22年度に新たな質問項目を幾つか追加した形で、労働者を対象としたWebアンケート調査を実施し、ミクロデータの収集・蓄積を行った。これらのデータについては平成23年度に分析する。
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