研究概要 |
発展途上国や先進国を問わず、政府が貧困削減政策を現金支給という形式で行う際に生じるスクリーニング問題の緩和ないし解決策について理論分析し、新たなモデルを考案した。 スクリーニング問題とは、個人の生産性に関して政府と個人間に情報の非対称性が存在することが原因によって発生する問題である。政府は個人の能力を観測することができないため,個人の所得を観測して、所得の低い人々を現金支給によって救済しようと試みるのであるが、低所得者が生産性が低いために低所得に陥っているのか、生産性は高いのであるが労働時間を削っている(労働をさぼっている)ために低所得であるのかが分からず、結局、すべての低所得者を支援することとなる。よって、コストが必要以上にかかったり、人々の援助への依存を強めるといった問題が発生する。 このスクリーニング問題を解決する方法として先行研究は、現物支給やワークフェアを提示しているが、純粋な現金支給での解決策はまだ存在しない。よって、今年度の研究では、政府が対象者に支給した現金を対象外の人々も利用できるような金融市場の整備や確立によって、現金支給という形式での貧困削減政策を政府が採択したとしても、スクリーニング問題が解決できるメカニズムをモデル化して提示した。 また、上記の研究以外にも、余剰分析を取り入れた最適課税制度を考案し、効率的な所得再分配政策を理論分析したり、労働の効率性を高めるための報奨制度や有給休暇制度のメカニズムを理論分析した。
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