二つの研究課題(1.聴覚障害教育に関する研究、2.障害者の就労上の課題に関する研究)を分析するために、平成25年度は以下の二つの研究計画を遂行した。 (1)ろう学校に通う聴覚障害児童の学力に関する計量分析:全国のろう学校で行われている教育方法や教員数、教育上の課題を明確にするために、ろう学校を対象にした郵送調査を行なった。調査では、ろう学校の教育方法や教員数、教育上の課題、教科書単元の履修状況等を質問するような様式に変更した上で、ろう学校における教育の進行状況を妨げている諸要因について分析した。当初の計画からの修正が一部あったものの、概ね順調に研究を進めることができた。 (2)障害者雇用政策に関する計量分析:研究協力者の藤井麻由氏(国立社会保障人口問題研究所研究員)とともに、昨年度に行ったCVMのための質問紙調査の結果を分析した。 この他、研究協力者の森悠子氏(日本学術振興会研究員)とともにDPIの公開している障害者雇用率に関する企業データを利用して、納付金が企業の障害者雇用に与える影響を閾値の不連続性を利用した計量分析によって検証した。さらに、総務省「経済センサス 基礎調査」と経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを用いて、回帰不連続デザインのもと、企業の障害者雇用と利潤率・生産性との因果効果について検証を行った。ほとんど研究蓄積のない障害者雇用割当制度について精密な計量分析を行い、納付金の効果がそれなりにあることと、障害者雇用が従来考えられてきたよりも企業の利潤率に悪影響をもたらさない可能性を定量的に示したという意味では本研究に大きな意義があるものと考えている。
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