本研究の目的は、日本のミクロデータを活用し、日本の夫妻間における資源配分(支出・余暇時間)が何によって規定されているかを実証研究することにある。 過去、Jacob MincerやGary Beckerから始まるNew Home Economicsにおいては、一人の意思決定者(主稼得者)が、家計行動(消費、貯蓄など)の決定を司っていると仮定したUnitary Modelを基礎としていた。しかし近年、女性が就業し、複数のBread Winnerが併存する世帯において、意思決定は一元的であると仮定することは困難となった。そのため、各世帯員が各々の選好を保有することを想定したCollective Model (Chiappori 1988;1992)による実証研究が増えている。本研究では、この手法を活かし、女性が所得源泉を持つようになった世帯で、有配偶世帯における資源(消費・時間)配分の構造に関する分析を目的とする。 今年度の実績は以下のとおりである。第一に、文献研究として、1990年代以降における、世帯内での妻の経済的地位、家計意思決定に関する研究の収集、サーベイを行った。 第二に、実証研究として、マイクロデータによる確認作業では、「消費生活に関するパネル調査」などを用いて、90年代以降における有配偶女性の就業継続状況、夫妻間の所得割合、家計管理に関する認識の変化などの推移を確認した。 その結果、女性の大卒割合、結婚・出産後の就業継続率は上昇する傾向が確認でき、全体的に夫妻間の所得格差は徐々に縮小していることが確認された。しかしながら、詳述すると、その現象は夫妻の年齢や子どもの有無ライフステージ別では、一様にみられる結果ではなかった。 次年度では、就業による妻の所得源泉の増加だけでなく、(内生性を考慮し)制度改正による世帯内の所得源泉の変化を活用し、それらが資源配分にどのような影響を与えるかを分析する。(799字)
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