現在、わが国では社会保障と税の一体的な改革が進められようとしており、その議論の中で基礎年金等の財源として消費税の増税が検討されている。また、様々な議論の中には、基礎年金の財源を全額消費税で賄う方式も提案されている。しかし、わが国の税と社会保険料は課税ベースを共有するなど互いに密接に関係しているにもかかわらず、これまでは政府内で行われた試算も含めて各制度の枠内にとどまるものがほとんどであった。そこで本研究では、基礎年金とその財源のあり方に関する議論に資するべく、財政と社会保障の一体的構造に着目して分析し、対応策を検討することを目的としている。 研究最終年度にあたる平成24年度は、①近年の財政運営の再評価と改革の動向に関するサーベイ、③社会保障と税の一体改革やアベノミクス等の直近の政策が財政の持続可能性に与える影響のシミュレーションによる評価、③応用一般均衡分析に用いる多部門多世代重複モデルの拡張と分析に取り組んだ。 ①に関しては、最近、社会保障と税の一体改革において社会保障財源としての消費税の引き上げが決まったことや、いわゆるアベノミクスなど、財政の持続可能性に影響を与える大きな動きがみられる。とりわけ消費税の引き上げは、本研究課題に直結する。そこで、これらの政策の中身と動向についてフォローしつつ、その背景を踏まえる必要から、少し過去にさかのぼって近年の財政運営の分析と再評価を行った。そして①の研究結果を踏まえて、②において、最近の政策が国の財政の持続可能性に与える影響を、財政シミュレーションにより明らかにした。研究成果は新聞に掲載され、論文誌にも掲載予定である。③の社会保障財源としての消費税引き上げについての多部門多世代重複モデルの拡張についてはやや難航しているが、計画年度終了後も継続して取り組む。
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