研究概要 |
当該年度では,自社株買いに関する富の移転の研究については,現在自社株買いにを実施した時期の前後において,株式リターンおよび株式流動性がどのように変化したかについて実証分析を行い,その効果についてを現在まとめており,最終的な段階である。本年度に関しては,自社株買いに関する富の移転の研究の領域でもあるが,自社株買いと表裏の関係である企業の配当政策に関する分析も同時に行った。こちらの研究に関しては,1つの研究成果としてまとまった。以下では,その研究成果について記述する。 「日本における配当の硬直性について」:本論文では,わが国のデータを用いて,配当政策の硬直性についての検証を行った。日本企業は,2000年代初頭に構造変化を経験したという前提の下で,標本期間を2つの時期(前期:1993年度-2002年度,後期:2003年度-2010年度)に分割して,配当政策の硬直性の程度の推定を行った。実証結果によれば,2002年度までの前半期では,配当政策の硬直性が観察されるのに対して,2003年度以降の後半期では,配当の硬直性は大きく低下し,企業は利益に対して柔軟的な配当政策を実施している。
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