本研究の趣旨より、研究対象となるファンドは、投資先である日本企業に積極的に介入を行うファンドとした。したがって、投資信託や年金ファンドなどは対象外となり、一方、プライベートエクイティファンド、バイアウトファンドや一部のヘッジファンドは研究対象に該当する。 これらのファンド(あるいはその設定会社)の多くはパートナーシップの形態をとっており、また非上場のため、上場企業によくあるエージェンシー問題とは異なる問題を抱えている。その問題をファンドはどのようにガバナンスしているのかについて経済的に分析を行った。 ファンドマネージャーは外部出資者より資金を募り、企業への買収やアクティビズムを行い、企業価値を向上させたうえで、リターンを回収するというモデルで成り立っている。ファンドマネージャーが出資者のエージェントである点は一般の企業と変わらないが、ファンドマネージャー自身も出資しており、しかも資金の回収にも何らかの制限が課されていることが多いのでエージェンシー問題は軽減されている。 また、マネージャーへの報酬はインセンティブ契約が一般的である。よって、投資先企業の利益からある割合の報酬を徴収することにより、企業との利害関係はより一致している。しかもその報酬に、いわゆるハイウォーターマークの規定、つまり企業のこれまでの業績を上回ったらという条件も付け加えられている。 最近起きているファンド絡みの不正として、内部取引や詐欺といったものが世間の関心を集めている。ファンドに対し透明性を高めるよう開示義務を強化すべきだという意見もあがっているが、バイアウトファンドやヘッジファンドにとってはビジネス戦略機密が漏れることによるコスト増という難点がある。それよりも、ファンドの取締役の責任やファンドの法令順守への罰則は日本ではまだ整備されていないことのほうが、最近の不祥事の背景にあることがケーススタディで分った。
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