今年度は既往研究のレビューに時間を割き、文化関係施設等のファンドレイジングに関する資料・データ等の収集を行った。例えば、Fama and Jensen(1983)では、寄附者をエージェント、NPOをプリンシパルとみることで、提供するサービスの質等が落ちないよう監視機能が働くことが示されており、寄附による資金調達の有用性について述べられている。Jamse and Rose-Ackerman(1986)や山内(1997)では、政府がNPOなどを直接補助する場合と寄附額に応じて所得を控除する間接的な補助の場合について、体系的・理論的に整理されている。寄付者は将来的なリピーター、長期的な顧客にも繋がる。これまでの公立文化施設にはこうした視点がなかったことから、このような観点から実証分析を行うこととした。さらに寄附(寄附に対する税額控除)は、政府が直接的に補助金を与えた場合とは異なり、寄付者が寄附先を決め政府が追認をしているという構図になっている。寄附者やボランティアが増えることで、提供者がサービスの品質を低めたり、偽ったりしないよう不正のインセンティブを最小化する監視機能を持っていると想定し、日本の公立文化施設の実証分析に応用するべくデータ整備を行った。 さらに、日本の民間文化施設のファンドレイズについて聞き取り調査を行うと共に、企業等による寄付行動の文化的相違や現状と課題について、アジアでも聞き取り調査を行った。
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