Benigno(2004)を拡張した2国で構成される共通通貨圏モデルを構築し、最適金融政策の下での最適財政政策の効果を理論的に分析した。この分析により目下混乱している共通通貨圏でのSGPと最適財政政策の役割についての議論が整理された。モデルの特徴として非貿易財と政府の予算制約式の導入が挙げられる。非貿易財の導入は欧州通貨圏で約50.3%の財が非貿易財であるという事実を反映させるためであるが、このためCPIの同質性が損なわれ国際的なリスクシェアリング効果の減殺を通じた財政政策運営の余地が生じる。共通通貨圏には単一の中央銀行と各国には財政当局の存在を仮定している。中央銀行は2次近似された効用関数から得られる損失関数を最小化するように金融政策を運営する。財政政策については財政政策を運営しないケース、協調するケース、非協調のケースを想定した。モデルの解は数値解析により得られた。生産性ショックに対するインパルス応答から分散を計算し、さらにその分散に基づき社会損失を計算した。分析に際して3つのケースの社会損失が比較された。社会損失の比較は非貿易財のシェアがゼロから1までのケースについて行われた。この結果、非貿易財のシェアが上昇するにつれ、財政政策により社会損失が軽減されることが認められた。非貿易財が存在すると財政政策が必要不可欠であることが確認された後に、非協調解について解析的に分析を行った。この結果、非貿易財のシェアにかかわらず、政策協調からの利得は全くないことが確認された。この研究成果は3度にわたり内外の国際学会で報告された。
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