研究課題
本年度は、先ず、前年度に購入したデータベース、Bureau van Dijk社のBankScopeから抽出した個別銀行データを利用可能な形に丁寧に整理した。銀行業は様々な業務を行なっているが、仮定として貸出市場での競争を考察することにした。その上で、どの指標を利潤とし、どの指標を費用とするかを先行研究や研究者の方々への聞き取りを参考にして選定し、計量経済学による分析が可能なデータとしてまとめた。抽出したサンプルは先進国だけでなく新興国・発展途上国をも広く含む192カ国の合計24,750機関であるが、変数が利用可能であるかどうかによって今後減らすこともありうる。次に、このデータから銀行業の競争度を推定するためのモデルを考察した。本研究では、上記の大規模なデータについて、利潤の効率性に対する弾力性を競争度の指標とみなすBoone指標を推定し評価することを目標としている。推定には限界費用と利潤弾力性の2段階の推定が必要となる。そのため、それぞれのパラメータが理論的に予想される符号となるまでコントロール変数の選定を行った。限界費用の推定にはトランスログ費用関数を用い、利潤弾力性の推定には対数線形近似した利潤関数を用いる。後者は様々な近似がありうるが、基本モデルを各近似法によるモデルで検定を行い、サイズおよび検出力をモンテカルロ・シミュレーションで評価し、最も当てはまりが良いものを選んだ。現在までの結果としては、概ね直感と整合的な推定値が得られている。
1: 当初の計画以上に進展している
データの整備・クリーニング、モデルや変数の選択等を終え、推定も順調に進んでいる。
今後は推定結果が頑健であるかどうかを厳しくチェックし、論文としてまとめ、すぐに学会・コンファレンス・ワークショップ等で報告していきたい。推定に時間がかかるため、頑健性のチェックは時間との戦いとなることが予想されるが、論文を査読付き雑誌に投稿するまで丁寧に確認作業を行いたい。
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Journal of the Japanese and International Economies
巻: Vol.25, No.2 ページ: 81-106
10.1016/j.jjie.2011.02.003
経済政策ジャーナル
巻: 第8巻第2号 ページ: 51-54