研究概要 |
2011年度は東アジア圏のなかでも特に中国と日本を分析対象として,(1)海外直接投資(FDI)の受け入れが中国のローカルな銀行部門の発展に果たす役割に関する実証研究と,(2)日本の協同組織金融機関のコーポレート・ガバナンスのあり方に関する数量分析に取り組んだ。前者については,先行研究によって非国有部門主導の驚異的な経済成長と,四大国有銀行が支配的地位を占める非効率な金融部門の併存という中国経済のパズルの存在が指摘されるなかで,FDIの受け入れが経済規模に比較して大きな省(直轄市・自治区)ほど,銀行信用供与の国有部門への極端な偏りなどの金融部門の「歪み」が軽減されるというパネル・データ分析の結果を得た。これらの分析結果については,名古屋大学大学院経済学研究科におけるワークショップ(2012年1月開催),および山東大学(中国)におけるワークショップ(2012年3月開催)で報告を行い,出席者とのあいだで広範な意見交換を行った(当該研究成果については,現時点で2012年5月に開催予定の日本金融学会2012年度春季全国大会における口頭報告も決定している)。なお,研究成果を取りまとめる過程で,中国経済論を専門とする複数の研究者を訪問し,分析手法の妥当性や中国の金融システムの実際について有益なコメントを得た。後者は日本の地域・中小企業金融の中核を担う信用金庫を対象として,そのコーポレート・ガバナンスのあり方の数量的類型化を試みる研究であるが,研究協力者の協力を得ながら分析の精緻化を図った。
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今後の研究の推進方策 |
中国における海外直接投資(FDI)の受け入れがローカルな金融部門の発展に及ぼす影響について,日本金融学会2012年度春季全国大会(2012年5月開催予定,立正大学)での口頭報告を予定している。そこでの議論もふまえ,研究成果をできるだけ速やかに国際的評価の定まった英文査読誌へ投稿する予定である。並行して,日本の協同組織金融のあり方に関する実証研究について,さらなる分析の精緻化を図るべく勘案している。
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