研究概要 |
本年度は昨年度から継続している中国の国内地域における銀行部門の発展に海外直接投資 (FDI) の受け入れが果たす役割に関する実証研究の精緻化を図るとともに, 新たに日本の国内地域における銀行業の寡占化が地域の雇用情勢に及ぼす影響に関する研究に取り組んだ。前者については, これまでの研究成果を日本金融学会 2012 年度春季全国大会(立正大学)にて報告し, 出席した他の研究者とのあいだで意見交換を行った。後者については, 銀行業の競争構造が製造業による地域雇用創出に外生的な影響をもちうるか否か, もちうるとすれば, それはどのようなチャネルを経て作用するのかを実証的に明らかにすることを試みた。そのために, まず都道府県別に銀行業の寡占指標を算出した上で, 寡占度の高まりが地域雇用の創出に及ぼす影響は銀行依存度が高いと考えられる比較的規模の小さな企業によって占められる産業においては負である一方で, 規模の大きな企業によって占められる産業では正となることを確認した。さらに相対的に所得が低い地域では, 銀行業の寡占度の高まりによって負の影響を受ける産業の平均企業規模が上昇するとの推計結果を得た。これらの研究成果については, 2012 年 9 月に開催された「第 6 回地域金融コンファランス」(中央大学)において報告を行っている(なお, 現時点で 2013 年 5 月に開催予定の日本金融学会 2013 年度春季全国大会での口頭報告も決定している)。以上の研究成果については, 今後できるだけ早い段階で査読誌等への掲載を図るべく, 必要な改訂を継続する予定である。
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