研究概要 |
研究目的である市町村合併を経済学的に評価するため、規模の経済性による費用削減について、総務省自治局が作成している『類似団体別市町村財政指数表』の類型を用いて実証分析した。市町村合併を実施した構成市町村の特性、地域的要因などを考慮しながら市町村の歳出総額について費用削減効果の分析を行った。その結果、市町村合併により一時的に費用は増大し、年を経るごとに費用は削減されていくが、費用削減効果は6,7年までであるという結果が明らかになった。この分析は『平成の大合併と歳出削減-類似団体別財政指数表を用いた実証分析-』として論文を執筆し、ワーキング・ペーパーとして公表しており適宜修正中である。市町村の個別費目の中で、議会費に着目した分析でも歳出総額と同様に費用削減効果が確認できた。この分析は『平成の大合併による市町村議会費への影響』は日本地方財政学会研究叢書第18号pp.62-84に査読付き論文として掲載された。市町村合併の評価の異なる視点として、どのような市町村が合併を実施したのか要因分析を行った。分析結果は、論文を執筆し『"Municipal Mergers and Special Provisions of Local Council Members in Japan", The 2011 Meeting of the European public Choice Society, University of Rennes 1,France』を国際学会で報告した。分担執筆として、章担当で、「平成の大合併における市町村の選択行動の検証」『地方分権化への挑戦「新しい公共」の経済分析』齊藤愼編大阪大学出版会第5章を執筆した。加えて、地方行財政改革の一つである市町村の行政評価の導入についても実証分析をおこなった。総務省から情報公開にて行政評価の導入状況のデータを取得し、基礎的な分析としてクロス集計分析をおこない「地方政府の行政評価の成果と課題-都市データを用いたクロス集計分析-」『千葉商大論叢』第48巻 第2号pp.103-116を執筆・掲載した。また、続く研究として、行政評価の導入が市町村財政に影響を与えたかどうかという視点で実証分析をおこなった。分析結果は、論文として執筆し、「自治体財政の健全化と行政評価-都市データによる実証分析-」『会計検査研究』第44号pp.91-101に査読付き論文として掲載された。研究計画では、実証分析に加えて、地方自治体のヒアリング調査を数度予定していたが、昨年3月11日の東日本大震災によりヒアリング予定の地方自治体にも当方にも余裕がなく、あえなく断念している。
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