本年度は、研究最終年度のため、主に学会や研究会などで研究成果を報告することに力を入れた。本研究の目的は、行政区域の広域化を実施する構成市町村の特性、地域的要因などを考慮した上で、これまで定量的な分析が出来なかったデータの欠損箇所を捉え財政面から学術的に評価すること、地方行財政改革を定量的に評価することを目的としていた。まず、市町村が財政運営の際に導入している行政評価について、都道府県や市町村を対象にしたヒアリング調査と実証分析を併用して研究を行った。分析では、行政評価が導入されたことで、「予算編成等」への活用は課題であることが明らかになった。また、地方議会や外部有識者からの意見の受け入れも課題とされていた。 また、近年、行政組織の規模や議会規模による政府支出への影響を分析した研究が蓄積されつつある。これらの研究では、財政放漫化の制度的な要因としてコモン・プール問題を指摘している。また、コモン・プール問題の大きさに影響を与えるものとして、予算意思決定プロセスの断片化が挙げられる。予算の意思決定プロセスにおいて、意思決定に関与するプレーヤーが多くなればなるほど、利害関係は対立しやすく、複雑化するためコモン・プール問題はより深刻になり、財政赤字へのバイアスは大きくなる。主に日本の地方財政におけるコモン・プール問題を検証するため、日本の市町村歳出に対する地方議員数の影響を実証的に明らかにすることを目的とした。分析より、歳出総額と議員数では正の関係を確認している。また、地方債収入と議員数の関係についても分析しており、歳出増加のための財源は新たな地方債発行により賄われている可能性から、日本においてコモン・プール問題が発生している可能性を示唆している。
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