研究概要 |
1. Budget Deficits, Government Debt and Long-term Interest Rates in Japan, Journal of the Japanese and International Economies, 32. pp.105-124. 2014. (1)Event Studyによる分析:バブル後の財政出動18回中の6回で有意な長期金利の上昇が観察された。この6回を考察したところ、財政出動後の補正予算での公債追加発行額が多く、景気動向指数先行指数が改善傾向にあるという特徴があることがわかった。また、この後半4回の上昇は、財政リスクを反映した「悪い上昇」であることが確認された。 (2)Published forecast を利用した分析:海外先行研究では財政赤字の現在値ではなく将来予想値が長期金利に有意な影響を与えるとされる。そこで、『後年度の歳入歳出への影響試算』の予想値を用いて分析したところ、(A)基礎財政赤字対GDP比予想値1%の上昇は長期金利を0.34%上昇させる一方、政府債務残高対GDP比現在値1%の上昇は長期金利を最大でも0.012%しか上昇させない、(B)t値で比較すると、海外先行研究と同様に、日本でも財政赤字対GDP比は現在値より将来予想値のほうが現在の長期金利を上昇させる可能性が高い、等が明らかとなった。 2. What causes changes in the effects of fiscal policy? A case study of Japan, Japan and the World economy, DOI. 10.1016/j.japwor.2014.04.003.forthcoming. どのような要因がマクロ経済構造に影響するかを検討したところ、貸出態度DIと構造的基礎的財政収支対潜在GDP比の2要因が有意な影響を持つことがわかった。その後、この2変数の閾値推定値により推計期間を分割しインパルス反応関数を推計した結果、両指数の悪化期に財政拡大の需要創出効果が弱くなることが確認された。なお、インパルス反応関数の形状の考察結果から、この背景には(1)民間投資の非利子チャネルと(2)家計の借入制約の影響、そして(3)非ケインズ効果の存在があると考えられる。
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