研究概要 |
本研究の目的は,企業間取引に関して流動性需要が存在する場合を想定し,貨幣供給による財源調達(インフレ税)を代表とした各種の課税政策が社会経済及びその厚生に与える影響を明らかにすることにある.研究計画初年度においては,まず本研究の基礎となる理論モデルの構築を行った.研究計画二年目となる平成23年度においては,研究の成果として以下の二点について新たな理解を得られた. 1.経済成長がある下で,生産関数に実質流動性が導入されるMIPFモデルにおいては,ある公共支出と課税政策の組み合わせのもとでは,均斉成長解となる解経路が非決定となる状況が生じる均衡が出現することがわかった.理論的な側面からの研究としては,非決定性の条件に関して興味深い現象であり,この点についてより深く探る方向性も考えられるが,本研究の目的からややそれるため,以降の分析では,非決定とならない状況に着目し,政策の効果についての分析を進めていく. 2.生産関数を一般化した上で,公共支出に関しては単純に総生産量の一定割合となる場合について分析を試みた.この公共支出は,貨幣の増発による貨幣調達(インフラ税)と所得税にて調達されるが,一定の公共支出のもとで所得税の比率を高くした場合,経済成長への影響については,概ね正となることが結果として得られた. なお,課税政策の変更がもたらす厚生への分析は現在進行中であり,平成24年度の研究において,解析的もしくは数値的な結果が出るよう鋭意分析していく.
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今後の研究の推進方策 |
MIPFモデルを用いた経済分析に関し今後の方針としては,2つ以上の生産セクターを考慮した上で,1つの財に関税がかかることを想定し,関税を引き下げた場合に起こる,為替と生産パターンの変化を分析することである.現在の日本において,TPPに代表される関税引き下げの議論が盛んに行われているが,関税引き下げによる自国の生産パターンの変更と,結果として生じる為替の変動からの影響について,MIPFモデルを用いて分析してすることは,意義があると考えられる.
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