本研究は、地方行財政における災害対応と官民連携のメカニズムを実証的に分析し、政策的含意を導き、地域防災政策のあり方を議論する。 防災政策として内閣府や経済界の委員会において民間企業の役割が取り上げられ、地域防災計画も見直しが進められ、民間企業の存在が大きくなっている。本研究はこれまで収集してきたヒアリング調査結果およびアンケート調査結果を活用して、官民連携による地域防災体制の構築方策を検討する。災害対応における官民連携においては、災害時に財の提供を民間が行うという協定を結ぶが、たとえ補償のある協定であっても民間企業における日常時のメリットは小さいと言える。したがって、災害対応という公共財供給におけるインセンティブ・メカニズムを考察することは重要である。 また、NPOや住民自治組織も、災害対応における官民連携の担い手である。これらの団体は財の供給について比較優位をもっていないが、災害時要援護者支援対策への対応など人間関係の距離が重要となる活動、すなわち人材については比較優位がある。要援護者支援対策については、内閣府によって自治体主導の体制づくりのガイドラインが示されているが、多くの自治体において住民レベルにおいて実践的ネットワーク体制は整っていないと言える。 地域防災体制を構築するためには、主体間の社会的ネットワークを形成するとともに、信頼と規範のある社会関係、いわゆるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を地域において醸成していくことが期待される。計量モデルを用いた実証分析の結果、地域の消防訓練等の活動への参加する企業は地縁組織や住民等との日頃のつきあい関係が形成されていることが明らかとなった。また、ソーシャル・キャピタルが醸成されている地域は地域活動への参加比率の高い地域であることが明らかとなった。これらを促進する環境整備が求められる。
|