研究課題/領域番号 |
22730272
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大石 直樹 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (00451732)
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キーワード | 株式市場 / 戦時期 / 経済史 / 証券民主化 |
研究概要 |
今年度実施した研究成果は、前年度から進めている東京株式取引所発行の『統計月報』と『統計年報』を用いて、戦前の株式市場に関する統計のデータベースの作成を継続して行ったこと、日本興業銀行が発行した『主要銀行会社事業成績』を用いて、主要企業の経営指標に関するデータベースの作成作業を行ったこと、また『日本証券史資料 戦前編』、『山一証券資料』、『日本金融史資料』など、戦前期の株式市場と証券会社に関する重要資料を分析して、戦前期株式市場の構造の検討を行った。特に戦前期株式市場に関する統計のデータベースの作成は、月次レベルの統計であるため膨大な作業量を必要とし、かなりの労力を割かざるをえないが、本研究をすすめる上で中核となるデータである。そのため、今後はこのデータベースをフル活用することによって、本研究が掲げている論点の解明につなげていくつもりである。 また、上記のデータベース作成や資料分析と並行して進めている、戦時期に政府が実施した株式市場の制度改革について、それが戦前の株式市場に与えた影響、及びこの改革と戦後との「証券民主化」との関係性に関する検討も行った。その結果明らかとなった、戦時期に行われた株式市場の再設計に関する政策理念や資本市場に対する経済統制が結果として証券企業に投資の大衆化を志向させ、戦時の改革が戦後の「証券民主化」を先取りするかたちで展開したことなどについて学会報告を行った(社会経済学史学会第80回全国大会の自由論題報告)。この報告は、戦後の「証券民主化」の歴史的前提として戦前期の株式市場改革を捉えるという本研究の目的にとって重要な研究課題の1つであり、この点に関する見通しを得ることを目指したものである。今後は更に分析をすすめ、成果を論文にまとめ発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの作成が、当初想定したペースに比べ幾分遅れているものの、それ以外の記述資料調査は順調に進展しており、それをふまえた学会報告という形で成果の発表を行ったことも当初の予定通りであり、おおむね、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、膨大な統計データの作成を基礎とするため、研究期間の大半はデータベース作成を集中的に行わざるを得ず、そのため、研究成果の取りまとめは最終年度に行わざるを得ないという性格を持っている。これまでの2年間でデータベースの完成に目処がたったことで、研究期間の最終年度に当たる本年度は、これらを基に分析を進め、戦前期の株式市場の構造とその特徴、そしてそれらが戦時改革によってどのように変容していったのか、またそれは、戦後の「証券民主化」といかに関連していくのか、といった点について解明を行うつもりである。
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