前年度から引き続いて、戦前期株式市場に関するデータベースの作成を行うとともに、資料調査のためワシントンにあるアメリカ国立公文書館(NARA)を訪れ、資料調査を行い、過去2年間の研究期間において収集した各種資料の分析を行った。 前者については、東京株式取引所編『統計年報』、同『統計月報』、日本証券取引所編『統計月報』、日本銀行統計局編『戦時中金融統計要覧』を中心に、戦前期の株式市場と金融市場に関する数多くの統計データの入力作業を行い、戦前期の株式市場に関するデータベースを構築した。 後者については、戦前期に東京株式取引所が発行していた調査報告書である『調査彙報』、日本証券経済研究所が刊行した『日本証券史資料』、東京大学経済学部が所蔵する「山一證券関係資料」、国立国会図書館つくば分館が所蔵する「閉鎖機関関係資料」、三菱経済研究所付属三菱史料館が所蔵する戦前期の三菱財閥に関する資料など、各種機関で収集した資料の分析を進めた。その結果、戦時期に行われた株式市場改革である「日本証券取引所」の形成が、株式市場の仕組みとして、戦後の株式市場に不可逆的な影響を及ぼしたこと、及びそれに伴って、証券企業の経営行動や上場企業の株式市場との関係、さらには投資家の行動に関しても、それまでの特徴とは大きな変容を見せることとなり、戦後の特徴へとつながっていくことを発見した。 また分析を進める中で、戦前から戦後にかけての株式会社制度の比較分析をより深めるには、当該期間を通じての、具体的な企業経営のケース分析を行う必要性を認識し、個別企業経営について同時に分析を進めた。
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