本計画では、20世紀前半期、遊牧社会と農耕社会が拮抗する内モンゴル南部(熱河・綏遠)地域におけるモンゴル・漢人間の土地取引関係の変遷と、内モンゴル社会の「内地」社会(漢人社会)への接合を、土地契約文書から考察することを課題とする。2010年度は、日本国内・外の資料館が所蔵する土地契約文書の所蔵状況を明らかにするために、台湾の国史館(新店市)、および蒙蔵文化中心付属図書館(台北)において史料調査をおこなった。その結果、まず国史館では、モンゴル南部の土地権利関係に関する資料のほか、中央政府の対内モンゴル政策に関わる資料を収集した。つぎに蒙蔵文化中心では、同機関が所蔵するモンゴル国の未整理の漢語資料を調査し、さらにハルハ・モンゴルにおける契約文書(漢語)の所在を確認することができた。これと同時に東洋文庫など日本国内の資料館で調査を行い、土地契約文書や関係資料を収集した。 以上の調査により、戦前、日本の諸機関が内モンゴル地域(旧満洲国・蒙彊地域)で収集・作成した土地契約文書資料の、大まかな全体像を把握することができた。また、今年度は、これら文書史料の性格を明らかにするために、収集した土地契約文書の整理・分類に着手した。このうち熱河省の土地契約文書については、旗(モンゴルの行政機関)によって残存する量に大きなばらつきがあり、また時代の変化とともに文書の形式が大きく変化してゆくことが確認された。
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