本計画では、20世紀前半、モンゴル地域で作成された土地契約文書を分析することで、モンゴル人と漢人農民のあいだの契約関係を解明することを目標とする。そのため本年度は下記のように史料調査と文書の分析を進めるとともに、国内外の学会や、研究機関のセミナーで研究報告を行った。 まずオーストラリアに滞在し、キャンベラの国立文書館、および国立図書館、オーストラリア国立大学付属図書館等で、20世紀前半の東アジア(中国、およびモンゴル地域)に関する史料調査を実施した。これと同時にオーストラリア国立大学の研究者と研究交流を行い、セミナーでの報告を通じて、本研究に関して貴重な示唆を得ることができた。これに加え、国内外で新たに刊行された土地文書の資料集や関連書籍を収集した。 つぎに研究計画をもとに、モンゴル地域(内モンゴルおよびハルハ・モンゴル)の契約文書や土地法規を比較検討することに努めた。その結果、20世紀前半にハルハ地域で確立された土地法規の一端を明らかにすることが可能となり、そこから内モンゴル地域との相違、および共通点を見いだすことができた。これらは遊牧地域と「内地」、すなわち漢人社会の制度の関係を考える上で、極めて重要な点であり、遊牧社会の変化を考える上で意義があると考えられる。
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