23年度の計画は、現地資料調査の成果を整理しつつ、それに応じた関連文献の収集に努めるものであった。成果報告を見据えての研究は、24年度にておこなうことが、当初からの研究計画であった。そのため、23年度においては、その準備期間として位置づけられる。 本研究の方法は、飯田市歴史博物館、ならびに飯田市各支所に大量に保管されている現地資料をデジタルカメラで逐一撮影するものである。これまでに撮影した資料データはかなりの分量に及び、その整理に多くの時間を割いたため、現地資料調査は当初予定よりも少なくなった。また一方で、収集した資料の裏付けを取る必要も多く生じた。これらの結果、最大の予算費目であった旅費の支出は、他の予定と並行させることで削除させ、その分を文献資料の購入費に充てることとした。 これまで収集整理した資料を見る限りにおいて、満州移民送出が、疲弊しているとされた母村の経済を好転させる要因となったと言い得る根拠は見当たらない。満州移民事業が農業恐慌からの脱出策としての有意性を持たなかったという当初の見通しは、状況証拠の面から固められつつあると考えている。 資料の蓄積および整理は、本研究が当初予定していた分量の約5割程度にとどまっていると思われるため、本年度前半期に、数次にわたる現地調査を実施する必要がある。最大の移民送出地域である飯田市の各所に保管されている満州移民関係資料の蓄積並びに一覧の作成は、満州移民研究全体においても大きな意義があるため、引き続きその作業を進めていく。
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