研究概要 |
本研究の目的は,20世紀を代表する生産システムである"大量生産体制'を相対化し,工業化過程の多様な経路・側面を解明することである。特に本研究では,20世紀前半のアメリカ-日本-東アジアの地方機械工業の歴史的展開過程に焦点を当て,各地域間の発展の異同を確認する。具体的には,まず米国の中小農業機械メーカー分析からスタートし,続いて,国際関係・比較史的な視点から日米の中小機械工業の特徴を浮き彫りにしたい。本研究では,市場=生産=流通の各側面において日本(広く東アジア)機械工業とアメリカ機械工業が相互にどのような関係(支配・従属・依存・補完)を構築していたのかについて,アメリカ側資料,日本側資料の両面から複眼的な視点で捉え,研究をまとめる予定である。研究初年度の平成22年度は,当初,研究目的の大きな柱である米国の中小農業機械工業の資料調査を進めるため,海外調査を重点的に実施し,その他,国内資料の収集を進める予定であった。しかし,平成23年3月の東日本大震災の影響を受け,同年3月中旬に予定していた北米資料調査が実施不可能となり,2年度目に予定していた資料の購入を進めるなど,国内の資料調査に力を注いだ。その結果,日本の中小機械工業,特に農業機械工業において,技術面や販売システム米国機械工業から少なからざる影響を受けていたことが判明した。次年度以降は,これまで不明な点の多い米国側資料から日本と米国の関係を探っていきたい。
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