研究概要 |
本研究の目的は,クリエイティブ産業におけるプロジェクト組織の価値創出メカニズムを解明することである。具体的には,(1)クリエイティブ産業の特性(クリエイティブ産業はどのような構造的特性を有しているのか),(2)プロジェクト組織の実態(プロジェクト組織はどのように編制され,どのような活動を通じて価値を創出しているのか)を解明した上で,(3)クリエイティブ産業におけるプロジェクト組織の価値創出メカニズム(クリエイティブ産業におけるプロジェクト組織が,高い価値を創出するメカニズムとはどのようなものなのか,またそれはいかにして構築されるのか)について,質的・量的データの検討を通じてアプローチする。 研究期間の1年目である今年度の研究成果は,「フリーランス・クリエイターの活動とコンテンツ産業の構造」である。本研究では,フリーランス・クリエイターの活動とコンテンツ産業の構造の実態を解明することと,産業振興にむけた課題を提示することが試みられた。その結果,フリーランス・クリエイターとクライアントとの直接取引が少なく,産業構造上,下請けという立場からの脱却が困難なこと,産業内に繋がりが狭い小世界が偏在し,プレイヤー間で顔の見えにくい状況が成立していることなどが明らかにされた。これらを踏まえ,プレイヤー間の関係のダイナミックな再編成を通じてクリエイティブ人材をより活かす構造への変革が求められることが指摘された。また単なる関係の再編成を超えて,クリエイターの教育・訓練システムの再構築やクライアントの啓蒙の必要性についても言及された。このような実績は,欧米が主導する先端的領域の整理検討及び,それに基づく経験的研究の蓄積という理論的貢献と,より現実に即した政策立案(価値創出を担うクリエイティブ人材の輩出と産業振興に関する)への示唆という実践的貢献を有すると考えられる。
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