平成22年度は、主として、自動車産業を対象として聞き取りならびに現場観察調査を行った。同時に、製品開発や組織能力に関わる文献も収集しサーベイを進めた。製品アーキテクチャの開発プロセスについて調査するために、日本の自動車メーカー数社の開発担当者(主として、開発を実際に行っているエンジニアと開発組織の部長クラス)への聞き取り調査を行った。その際に、特に、自動車の組込みシステムの開発と、開発組織内での部門間のコンフリクトについて焦点を当てた。つまり、開発組織において、メカ開発部署、エレキ開発部署、ソフトウェア開発部署間でのコンフリクトとコミュニケーションのあり方について、特定の車種を取り上げて詳細に聞き取りを行った。さらに、他の車種についても複数取り上げて、会社全体としての傾向・取り組みについても確認した。この作業を、複数の自動車メーカーに対して行った。このような聞き取り調査を通じて、製品アーキテクチャの組織内選択プロセスに影響を与える複数の要因が明らかになりつつある。現在、その結果を整理・分析しており、平成23年度中にはその成果を公開することができる予定である。 さらに、特定の自動車企業を対象として、生産職場への濃密な現場調査も実施した。自動車のデジタル化や経営環境の変化といった大きな環境変動に対して、自動車の生産職場では、どのような適応行動がとられているのかということについて、主として、現場のグループリーダーに着目して分析を進めた。それにより、自動車生産の競争力を支える組織能力の一つの源泉について明らかになりつつある。その成果の一部は論文や学会において公表されており、平成23年度も継続して調査・研究を続ける予定である。
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