研究概要 |
本研究は,サービス産業としての旅館を対象に,高品質のサービス提供に向けた組織・人材活性化の方法および効果を分析することを目的としている. 本年度は,実際に活性化している組織がどのように高品質サービスを提供し,それが顧客にどのように認識されているのかを分析・検討した.具体的には,サービスに於ける提供者と受容者の価値共創の考え方に基づき,サービス価値の創造と評価の体系を構築した。そして,Web上のくちコミ情報を題材に,顧客のサービス価値認識,企業の価値提案の状況をサービスマーケティングの7P(Product, Process, Price, Physical evidence, People, Promotion, Place)の視点から定量化し,両者のギャップを分析した.初年度に調査・分析した旅館のWeb上の公開くちコミデータを規準に他旅館との比較分析をした結果,同じ料金帯における旅館同士でも企業の価値提案内容と顧客のサービス価値認識に違いがあり,算出されたサービス価値には大きな差がでた.この成果は論文にまとめ,企業内部の人材マネジメント施策の成果と外部顧客のサービス評価を,数値で対応することができる枠組みとして意義が大きいことを示した. サービス企業において,活性化は単に内部社員の士気を高めるためだけにあるものではない.実際に顧客接点に立った場合にどのように創意工夫しその時々のサービスプロセスを良好にするかにも向けられていなければならない.23年度に構築した価値共創結果の評価モデルは,この活性化の外部効果を評価する上では大きな前進であったと考える.なお,当初想定していたタッチパネル式デバイスの開発は経験価値の収集ツールの開発として評価実験が完了しており,顧客がサービスプロセスをどう評価するかに有効であることを見出した.
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