企業が環境対策を推進するためには、ステークホルダーからその取組をプラスに評価される必要がある。本研究では、ステークホルダーの中でも投資家に注目し、投資家が企業を評価するために重要な、環境取組情報の開示について分析を行った。情報開示に対して各企業はどれほど協力的であり、またその協力度はどのような要因に影響されるのであろうか。本研究では、社会的責任投資の取組のひとつとして大手金融機関が始めたカーボンディスクロージャープロジェクト(Carbon Disclosure Project:CDP)が実施しているアンケートに対する企業の回答状況の分析を通して、上記の問いに答えることを目的とする。回答状況については、CDPのHPからデータを入手し、財務データは、日本政策投資銀行編集・日本経済研究所発行「企業財務データバンク」及び東洋経済「会社四季報」からデータを入手した。 本年度は、昨年度に実施した分析を精緻化するために説明変数を追加したため、新たにデータ収集を行うとともに、再度推定を行い、以下の結果を得るとともに、それをまとめる作業を行った。 本研究の分析対象期間は、2006年~2008年である。分析対象企業は、CDPジャパン500に含まれる日本企業である。被説明変数は、CDPに対して温暖化対策の情報を提供したかどうかを示す変数である。これに対して影響を与えると思われる諸要因を説明変数として分析した結果、有意に推定された変数は、外国人持ち株比率、ハーフィンダール指数、従業員数、広告宣伝費、負債比率となった。
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