本研究では、価値獲得につながる意味的価値の創造にとって重要な意味をもつ製品開発におけるデザインの実現に関して、デザインと技術の統合マネジメントの要点を検討することを目的としていた。実施計画に記したように、平成22年度は「統合の担い手は誰か」という論点に関する理論的研究を行い、計画時に記したように多くの既存文献を精読した。また、この分野に詳しい研究者と様々なディスカッションを行うことができた。しかし、日本の主要な情報家電メーカーを対象としたインタビュー調査は予定したようには進めることができなかった。なお、ディスカッションの成果をまとめたものとして『組織科学』に投稿中の共著論文があるが、残念ながら年度内にまとめることはできなかった(今後も継続して改稿する)。文献のレビューの結果も所属機関の学内紀要への投稿を予定しているが、こちらもまだまとめることができていない。これは、デザインという概念が経営学において非常に広い領域に関わる概念であり、整理することが難しいことによる。 また、統合の担い手が構築しているネットワークに関して、ネットワーク分析を実施することを次年度以降に予定しているが、この技法を経営学に応用する際の注意点をまとめた。これは、ネットワーク分析を経営学に応用する際の注意点を整理したものである。具体的には、ネットワーク分析を行う際の因果図式の問題と構成概念と指標に関する妥当性の問題(内的妥当性と構成概念妥当性)に着目することの重要性を示した。
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