研究概要 |
本研究の全体構想は,分権的な組織における組織成員の自律性・自由度と組織幹部の統制のバランスが,組織全体の変化対応能力に及ぼす影響を「集合財」という鍵概念を用いて説明する理論を構築することにあった. この研究を考察するための具体的な事例として,本研究担当者は,2002年4月からある外食フランチャイズ・チェーンについて,フランチャイザーの経営陣とフランチャイジーたちから綿密な聞き取り調査を行い,彼らのそれぞれの立場からの戦略意図を理解するという作業を進めてきた. 本研究では,補助金の交付期間内に,分権的な組織において,ただ乗りをする組織成員が組織の変化対応能力に影響を及ぼすメカニズムを解明したモデルをいくつかの事例研究に基づき提示できると考えていた.具体的には,以下の3つの段階を経て研究を遂行する予定であった. (1)データ収集および理論の精緻化と,(2)データの整理と分析と事例記述,(3)事例解釈を経た研究発表および論文執筆である.平成22年度は,主に(1)と(2)に注力しつつ,(1)の理論精緻化のための(3)を行い,平成23年度は,分析のための情報・資料等が整っていることから総まとめとして(3)に集中したいと考えていた.また,平成22年度,平成23年度ともに,学会発表と学界誌への論文の投稿をいくつか予定していた.この研究期間における最終的な研究成果としては,博士論文と本研究課題をベースとする研究書の出版を予定していた. しかし,これらの計画は遂行できなかった.なぜなら,実際の研究成果としては,(1)と(2)の作業に思った以上に時間がかかってしまったため,(3)のアウトプットまで補助金の交付期間中に到達できなかったからである.しかし,時期はずれてしまったが平成24年度に,これまでの研究蓄積を元に著書を含めいくつかのアウトプットが出る予定である.
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