臨床研究は治療法の改善や疾病の理解等を目的として実施される「人」を対象とした医学的研究であり、その中でも医薬品や医療機器の製造販売承認を得るための試験は治験と呼ばれる。臨床研究(以下、治験を含む)によって得られた成果は、医療の質の向上のみならず、医療分野におけるイノベーションを創出し、経済成長にもつながると考えられており、社会的に極めて重要である。臨床研究の実施には、医師だけでなく、臨床研究コーディネーターをはじめとした人材が効果的・効率的に取り組むことが重要である。しかし、90年代より、臨床研究を取り巻く環境が変化し続けていることなどに起因して、これらの人材育成の体系化は十分に進んでいるとは言い難く、今なお人材育成のあり方についての議論が絶えない。今年度は、昨年度の文献調査、ヒアリングやインタビュー調査の結果を元に、臨床研究コーディネーター等を対象としてインタビュー調査を実施した。特に、対象者が臨床研究に関する業務を習得したプロセス、業務を教える側となった際の指導方法及び職場での学習の成果や課題について調査し、有効な人材育成を行うための学習環境のあり方や学習プロセスについて検討した。主な結果として、施設内の他職種とのインタラクションを通じて臨床研究における個人の役割を認識・形成していくことや、職場内だけでなく職場外にもネットワークを構築することによって様々な学習機会を得ていくこと等が明らかとなった。さらに、臨床研究コーディネーターの導入研修については体系化がなされてきたものの、一方でその体系化がそれ以降の個人の学習に弊害をもたらす可能性が示唆され、今後有効な人材育成のあり方を確立していく上での重要な知見が得られた。
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