研究概要 |
本研究の目的は,非対称的競争という概念を通して,なぜ業界に関する技術的蓄積と知見の乏しい海外異業種新規参入企業が利益を享受できるのに対し,優れた技術力・製品開発力を有する日本企業が実力に見合う利益を上げられにくいのかを検討することである.平成22年度は,本研究に取りかかる予備段階に位置づけており,次年度以降の本格的研究に向けての資料収集と蓄積が目的である.具体的には,次のように研究を進めてきた.まず.非対称的競争に関する関連研究のレビューを行い,非対称的競争の現象,非対称的競争を生み出す源泉,非対称的競争の類型化の把握に努めた.その結果,非対称的競争の現象の一例としては,競争主体AはBを競争相手と考えるのに対し,BはAではなくCを競争相手と見なす競争状態が明らかになった(陳[2010]を参照),また,主な非対称的競争の類型としては,比較優位理論に基づく生産コスト上の非対称性,技術水準上の非対称性,競争市場の構造上の非対称性,文化や習慣による地縁的優位上の非対称性,政府の規制などによる制度上の非対称性の存在も明確になった.次に.文献サーベイのほかに,比較検証を準備するために,中国における電動自転車や電子ブック関連の資料収集,および類似的な研究を行っている中国の学者との意見交換等にも力を入れてきた.具体的には,中国人民大学と華中科技大学への訪問,および両大学の所在地である北京市と武漢市の電動自転車や電子ブックの市場動向の調査,関連企業への予備的聞き取り調査を実施した.その結果,貴重な知見が得られた.また,中国語の関連論文,雑誌記事等大量の資料を収集することができた.集められてきた資料および聞き取り調査の結果は,現在分析の途上にあり,平成23年度に継続される.
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