平成24年度では,関連文献のレビューによる非対称的競争の類型の精査(平成22年度)と,現地のフィールド調査等による中国の電動自転車産業の事例に関する調査研究(平成23年度)につづき,次のような二つの取り組みを中心に研究を進めていた。ひとつは,中国の電動自転車産業の調査結果を考察すること,もう一つは,非対称的競争の状況下における企業間の模倣行為を精査すること,である。一番目の取り組みについて,本年度では中国の電動自転車産業の進化を歴史的な重要出来事をもとに検討し,この研究成果の一部を中国の電動自転車産業に関する一考察として『産業技術大学院大学紀要』第6号にて報告した(単著)。この報告において,中国の電動自転車産業の進化プロセスのなかで特に注目すべき特徴として,(1)非技術的な要因の役割と(2)政府の奨励政策など制度的要因の重要性という2点を指摘し,それが重要なのは技術的な要因が産業進化を推進する必要条件であり,十分条件ではないこと,産業進化を促す制度およびその時々の時勢こそ,産業進化や社会におけるイノベーション成果の定着に重要な役割を果たすことを示唆するからである,と述べた。二番目の取り組みについて,これまでの研究の知見から非対称的競争の類型のなかで,文化や習慣による比較競争優位の非対称性や政府の規制による制度の非対称性などが明らかになった。中国の電動自転車産業の調査研究でも制度などの要因に深く関わる企業間の模倣行為が観測された。このような企業間の模倣行為のメカニズムを明らかにすべく,本年度では組織間の模倣行為に関する既存研究を整理しながら研究を進めていた。この研究結果の一部は,国際投資決策中的組織間模倣行為研究述評を題目に『外国経済与管理』第35巻第3期にて発表した(共著)。
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