現代の日本の高等教育サービスは、国際的な市場化・財化への流れと国内のユニバーサル化の圧力にさらされており、質の保証という観点から「標準化」と「多様化」という二つの課題を突きつけられている。本研究は、これらの課題を解決する手段の一つとして2005年や2008年の中央教育審議会の答申で議論されている大学間の連携(特に学士課程教育上の協調ネットワークの構築)について、学士課程教育を教育財の生産工程として捉えたマーケティング・経営学の視点より考察し、具体的かつ実践的な施策を提言できうる理論モデルを構築することを目的としている。 2010年度については文献レビューを中心に行い、大学間連携と大学国際化について同時的に説明する理論モデルを構築した。各大学は科目番号(コード)化を基盤に大学の建学の精神や教育目標に従った授業科目を配置していくカリキュラム・グラデーション(教育財の比較優位)によって標準化と多様化を構造的に共存させ、以って大学間の連携を構築していくことが高等教育全体での標準化と多様化という課題を達成することにつながり、また大学の国際化につながっていることを説明した。 これは当初、研究計画の中で構築を予定していた2010年度「大学間連携のモデル」と2011年度「大学国際化のモデル」の二つを合わせた理論モデルを研究協力者と構築し、2010年度に論文として発表を行い、また内容を踏まえ口頭での報告も行った。事例研究として単位互換やコンソーシアムの実施スキームについて事務局へのヒアリング調査等も行った。 2011年度は引き続き関連する文献のレビューや先端事例のヒアリング調査等を行い、「学士力」「分野別質保証」等、学士課程教育上の非常に重要なコンセプトをより反映した理論モデルに精緻化していく予定である。
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