研究課題
本研究の目的は、付加価値(顧客価値)の高いものづくりのあり方について考察し、それを実現させるための施策を具体的に提示することである。ものづくりにおいて重要なのは、技術的側面だけではなく顧客にとって高い価値を生み出すことである。平成23年度は昨年度に引き続き、製品開発段階から生産を経て、製品が市場に投入されるまでの「モノと情報の流れ」に関する正確な実態把握と分析を行った。そのために文献資料収集と国内外でのフィールドリサーチを実施し、その成果を書籍と論文として発表し、数回の学会報告も行った。外国でのフィールドリサーチについては、平成23年9月にタイとイタリア、平成24年2月にスペインを訪問し、Hondaの四輪および二輪の生産・販売拠点と現地部品サプライヤーの調査を行った。その結果、Hondaを始めとする日本の二輪メーカーが、現地で生産と販売の連携を強化し、高付加価値型のものづくりに向けた様々な施策を行っていることが分かった。同時にヨーロッパでは、BMWやハーレーダビッドソン、トライアンフなどの欧米二輪メーカーの競争力が軒並み上昇し、高付加価値帯の市場領域で日本メーカーがやや苦戦しているという現実も見受けられた。こうして得られた研究成果の一部は、イギリス(ケンブリッジ大学)で行われた学会(EUROMA)と日本(東京大学)で行われたシンポジウム(International Supply Chain Management Symposium and Workshop)にて成果報告を行った。他にも、高知大学で行われた自動産業に関するワークショップ、明治大学で行われた日韓学術セミナーでの招待講演を行った。なお、平成23年6月に東京大学ものづくり経営研究センターのディスカッションペーパーとして発表した論文は、同センターの平成23年1年間のDPダウンロード数で3位を獲得している。さらに、平成23年8月には『日産プロダクションウェイ』有斐閣も上梓した。
2: おおむね順調に進展している
大学の夏期休暇と冬期休暇を利用したフィールドリサーチとそれに伴う成果発表も順調に進んでいる。とりわけ、平成23年度は調査企業の多大な協力もあり、ヨーロッパ二輪産業の調査において大きな収穫を得ることができた。特にヨーロッパは高付加価値型のものづくりに長けた地域であるため、今後の研究推進に対しても大きな足がかりとなった。
平成24年度は、本研究の最終年度となるため、単著での成果報告書を書籍として上梓することを目標している。出版社(同文舘出版)との出版契約も結んでいる。現在すでに原稿の執筆にとりかかっている。9月には、ヨーロッパ(ドイツなどを)を訪問し、現地メーカーおよびPhotokina(2年に一度開かれるカメラに関する世界的な展示会)を訪問し、最新の調査を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
International Journal of Logistics Systems and Management
巻: Vo.9, No.2 ページ: 204-217
10.1504/IJLSM.2011.041506
東京大学ものづくり経営研究センター・ディスカッションペーパー
巻: No.295(オンライン掲載のためページの明記不可能)
http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/pdf/MMRC355_2011.pdf