本研究課題の目的は、日本の中堅・中小企業の競争優位の源泉およびその成長モデルを探求することである。具体的には、日本の中堅・中小企業のグローバル化や新規事業創造の実態、また脱成熟をはかってきた経営行動等を検討・分析することを通じて、本研究課題の解明をはかる。 本研究課題は広範な分野にかかわるため、産業組織論や経営学におけるポジショニング論や資源ベース論、創発戦略、および中堅・中小企業等に関する既存研究を渉猟し、分析枠組みの導出を試みた。そのうえで、企業の経営実態を把握するために、国内外に立地する日本企業および海外企業を訪問し、聞き取り調査を行った。その成果は、国際ビジネス研究学会や戦略研究学会で報告するとともに、論文等としても事例研究を行った。日本の中堅企業の成長モデルを解明するための具体例のひとつとして、世界トップシェアのペン先メーカーであるテイボーを取り上げた論文においては、次のような仮説が得られた。(1)蓄積(コア)技術の活用、(2)創発的な姿勢、(3)明確なドメイン設定、(4)ポジティブな企業風土、の4つの経営的な特性がテイボーの成長に寄与したというものである。これらの知見は、限られた数の企業や関係者への聞き取り調査から得られたものである。そのため、今後さらなる実証を続け、本年度に導出された仮説を検証する必要がある。次年度以降は、分析枠組みの精緻化とともにさらなる仮説検証のための実証分析を行う
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