本研究課題の目的は、日本の中堅・中小企業の競争優位の源泉とその成長モデルを探求することである。具体的には、日本の中堅企業および中小企業のグローバル化や新規事業創造の実態、また脱成熟をはかってきた経営行動等を検討し、分析することを通じて、本研究課題の解明をはかる。 本年度はこれまでの文献研究および企業調査を通じた分析枠組みをもちいて、さらに企業調査を行った。近年のグローバル化のさらなる進展と日本国内市場および経済の成熟化にともない、中小企業の海外進出も漸増傾向にある。こうした海外進出する中小企業の中には、これまでいわれてきたような大企業追随型の中小企業のみならず、経営者の積極的な進出意図をもったものが存在することがわかった。しかも、そうした企業は現時点で成功しているものも多く存在することがわかった。また、日本の親会社からの資金的および技術的支援に依存するのではなく、進出先においてより積極的な販路の開拓と技術の獲得が海外子会社のプレゼンスを高めていることがわかった。すなわち、とりわけ中小企業においては、経営者の積極的な海外進出への意欲と計画および実行力、脱親会社依存が成功要因のひとつではないかという暫定的な仮説を得た。この仮説を実証することは、今後の研究課題となる。
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