研究概要 |
知識探索ヒューリスティクスの有効性分析のために必要となる社会シミュレーションの分析技法を昨年度開発した.この技法はシミュレーション結果が取り得る範囲(可能性)に着目したものであり,マクロレベルの事象をミクロレベルの振る舞いから説明する際の分析の出発点を提供する見取り図の役割を果たす.一方で開発した技法は社会シミュレーションの全体プロセスの中での位置づけが不明確であることが課題としてあげられた. このことを受け(以下,この分析技法をシナリオ分析と呼ぶ),本年度はシナリオ分析がシミュレーションのモデリングから分析,プレゼンテーションの全体の過程においてどのような貢献をしうるのかを検討した.研究成果として以下の3つの知見が得られた. (1)シナリオ分析は分析者にとってモデリング・シミュレーションを分析者の恣意性を排除した妥当な形で展開することを保証する.具体的には利用した乱数シードの影響や,分析時に選択した試行が全体帰結の中でどのような位置にあるものなのかを明らかにすることにより貢献する. (2)シミュレーション結果のプレゼンテーションにおいてシナリオ分析を実施することで問題関与者が分析者の提案が妥当であると考えることが期待できる (3)参加型のシナリオ分析を実施することで問題関与者の間で組織学習が行われることが期待できる これらの成果を2回の国際会議・ワークショップ(AESCS2012,CSIEP2011)と2回の学会発表を通じて発表した.これらの会議を通じたフィードバックをもとに,国際会議ポストプロシーディングへ投稿した.
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