本研究は、映画、TVドラマ、アニメーション、ゲーム産業などのコンテンツ産業において、作品であり商品でもあるコンテンツを製作する製作組織を捉える一般的な理論モデルを提示することを研究目的としている。今日、経済産業省から国を挙げてのコンテンツ産業のビジネス振興が強調される一方で、コンテンツがどのような製作組織で作られているのか、その製作組織はプロデューサー・システムと一般的に言われるけれども、どの産業でもそのシステムは同じで違いはないのか、といった学術的な視点での研究蓄積はなされていない。これまでの研究成果からいえば、各コンテンツ産業の各製作組織には共通部分、プロデューサー、ディレクター、出資者が中心的役割を果たしていることが存在するものの、その3者の役割内容については差異が見受けられる。本年度はTVドラマのプロデューサーの方々にインタビュー調査を行ったが、たとえばTVドラマでは映画と比べてディレクターには作家性が要求されておらず、作品の内容についてはプロデューサーが中心となって決定していた。他にも、安定した視聴率の確保のために出資者の意向を重視するという放送局側の事情で、映画と比べてプロデューサーにとって作ってみたい作品が作りづらい環境にあることが分かった。各産業の各ビジネスモデル、作家性と資金回収のどちらに比重を置いているか(作品か商品か)といったことによって、組織デザイン上に差異が生じてくるのである。本研究はこうした視点も含めて研究していく予定である。本年度は前記のようにTVドラマのプロデューサー・システムのモデルの検証を中心に行った。また、成果の発表としては6月に組織学会で発表を行った。また、本年度は資料の収集と来年度調査予定のインタビュイーの確保に注力した。
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