映画・TV番組・アニメ・ゲームといったコンテンツを扱う産業において、作品であり商品でもあるコンテンツは、プロデューサーを中心としたプロデューサー・システムと呼ばれる製作組織によって作られている。本研究の目的は、プロデューサー・システムの主プレーヤーであるプロデューサーやディレクターの方々にインタビュー調査を行い、質的データを重ねて取得していくことで、コンテンツ産業の製作組織を捉える一般的な理論モデルを導出することにある。一般モデルが提示されると、それを基準として、各産業の各製作組織の違い、つまり主プレーヤーである出資者・プロデューサー・ディレクターの分業と調整のパターン(組織デザイン)の相違点を記述することが可能となる。こうした組織デザイン上の相違点を比較検討していくことで、資金回収を重視したモデル、資金回収よりも作品の芸術性を重視したモデルといった組織モデルを提示することが可能となる。本年度の主な調査成果としては、①ある絵本を原作としたアニメのプロデュース過程、②萌えイラストやアニメコンテンツを使った町おこしビジネス、がある。①では、原作絵本が人気であることが、原作者の意向が強く反映されたアニメ化となり、製作組織内のプレーヤーの力関係を左右するものとなっていた。また、原作が人気であることが、資金拠出の決め手の1つとなっていることも分かった。つまり、資金回収を重視したモデル・組織デザインとなっていた。②では、ビジネスの仕掛け人は、キャラクターデザイナーと発信したい地方資源との良い相性を考えているなど、プロデューサー的な役割を担っていることが分かった。また、アニメコンテンツを用いた町おこしにおいては、タイアップ商品そのもので儲けを出そうと考えているのではなく、アニメの認知度を上げることを目的としていること、商品をネット上でのファン向けのネタとしていることなどが分かった。
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