研究概要 |
企業はさまざまな関係性を周囲と形成しうるが,それら関係性は種類が多様なだけでなく,その組み合わせが企業に影響を与えているはずである.そこで本研究は,企業の複合的ネットワークの構造分析と成長モデルの検証を行う. 本年度は企業が築く共願関係と,実際の動作主体である発明者が築く共願関係との間にどのような関係があるか特に調べた.本研究の特徴の一つは大規模データを扱うことであるが,これにより初めて確率分布の議論が可能となる.主に得られた結果として,発明者はすでに構築された企業間の関係を再利用する可能性が有意に高いということである.これは日本に特徴的であり,アメリカではそのような傾向はみられない,ここではアメリカでは企業間のと特許共願は一般的でないことを考慮に入れる必要がある.日本では発明者間の初めての協力関係において高い効果を示すが,企業間においては過去に協力関係があったことがポジティブに働くことが得られた. この分析においては,企業に属する発明者をランダムにした場合と実物を比較して行った.実際のネットワークでは,組織間の共同研究がランダムよりも多く起きていることがわかった.これは同僚がすでに共同研究をした組織を各人が選ぶ傾向を意味しており,個人のネットワークが組織のネットワークの影響を受けていることを明確に示す.
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