企業による知的財産マネジメント(本研究は特許管理に限定)の形成と発展の類型化および国際比較を行うため、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社およびウェスチングハウス・エレクトリック社における米国内及び海外における特許管理について、米ニューヨーク州スケネクタディのスケネクタディ博物館・文書館、米ペンシルバニア州フィラデルフィアのアメリカ哲学協会図書館、英オックスフォード大学ボドリアン図書館にそれぞれ所蔵されている経営史料の分析により明らかにした。 本年度の研究により明らかになったことのうち主要なものは、①GEおよびウェスチングハウス・エレクトリック社においては1880年代に特許管理の組織化(制度化)が発生したこと、②初期のグローバル経済下において海外経営を行っていたイギリスにおいて両社ともに現地で特許管理の組織化を行ったこと、③他方で現地における特許管理の組織は両社において異なり、GEがイギリス、ドイツ、フランスといった国においてそれぞれ特許管理を組織化したのに対し、ウェスチングハウス・エレクトリック社はロンドンに全ヨーロッパを統括する欧州特許管理部を組織したこと、である。 これらの研究成果は、南アフリカ共和国で開催された世界経済史会議、フランスで開催されたヨーロッパ経営史学会と経営史学会(日本)の第1回共同国際会議、東京で行われた経営史学会(日本)、アメリカ合衆国で開催された経営史学会(BHC)において論文発表を行い、国際的に幅広い議論に付した。 また、中国企業における知的財産管理の展開については、日中関係の悪化により現地における調査を行うことはできなかったが、中国知財データベースを用いて分析を進めた。中国における知財管理の展開に関する研究成果は、今後国際学会において経営史の国際比較アプローチを提起する中で発表する予定である。
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