平成22年度はインドとタイでの調査をそれぞれ1回ずつ行った。インドでは、二輪車関連企業を訪問するとともに、精力的に二輪車・四輪車ディーラーを回った。この結果、需給両面でのインドのモータリゼーションの実態把握を進めることができた。一方、タイの調査目的は主に次の2点であった。第1に、国際的に見てコスト高となりつつあるタイではあるが、地場系企業からの調達を増やすことでまだ十分コスト的な競争優位はあるのかどうか、という点に関してである。第2に調達先としてタイの地場の中小企業がどの程度のQCDの能力を備えているのか、その一方で彼らタイの中小企業はどのような戦略を描いているのか、という点に関してである。これらを念頭に、タイの地場系企業を2社、BOI(タイ工業省)への聞き取り、モーターショーへの訪問によるタイにおける各企業の市場へのアプローチの状況の確認、各販売店への訪問調査である。詳細な考察は今後の課題であるが、タイの地場企業はQCDへの取り組み、設備の導入等々日本企業に劣らない状況にあるということが確認できた。これはタイにおける日系企業の調達先の多様化が可能であることを示すとともに、受注競争は更に激化することを示唆している。 あわせて、本研究に関連する国内二輪車関連企業への調査を東京、静岡、球磨で行った。さらに、こうした実態調査で得られた知見に関する考察を深めるため、東京や神戸、高知での学会、研究会に参加した。こうした平成22年度の調査、研究会への参加を踏まえ、現在、インド二輪車産業に関する論文を執筆中である。また、タイ、日本での調査から日本企業の国際戦略の現状、特に新興国市場の取り組みに関して多くの示唆を得ることができたことから、これについても戦略論、国際経営論、イノベーションといったことを視角としながら論文を執筆中である。
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