22年度に予定していた計画に沿って(1)マクロレベルの統計資料の収集、(2)タイの企業年鑑や調査会社の資料の入手、(3)事例調査に努めた。(1)の統計資料では、特にBusiness and Trade Surveyの時系列データを収集し、2000年代の東北タイにおける事業所当り従業員数や、従業者当り売上高の増大がみられ、全体として大規模化が進んでいる傾向が読み取れた。(2)に関しては、タイにおける最有力ハイパーマーケットのテスコ=ロータス(Ek-Chai Distribution Center)の財務諸表が過去数年間公表されていないことが課題であったが、Euromonitor社のタイ小売業に関する報告書に掲載されていることを確認した。さらに同社の資料からは、タイの全小売業の売上高に占めるハイパーマーケットの比率が、2000年代半ばから一定数にとどまっていることが判明し、ここ数年間のタイのハイパーマーケットが成熟ないし停滞の状況にあることが推測された。(3)については、タイに展開するある日系消費財メーカーについて、ハイパーマーケットなどグローバルに展開する小売チェーンとの商談方式が、およそ2005年以降、急速に洗練され、標準化されたシステムとしてグループ企業全体に定着しつつあることが判明した。 総じていえば、今年度の調査からは、2000年代半ば以降のタイに展開するハイパーマーケットは、タイに定着したものの、業態としては成熟傾向にあることを見出した。この見解は、従来のタイのハイパーマーケットに関する多くの通説とは異なる(但し、タイにおけるハイパーマーケットの伸びなやみを指摘する説もある)。さらにタイに展開する大手消費財メーカーの側も、グループ企業間で販売手法の標準化を強め、以前よりもハイパーマーケットに対する交渉力を強めている。
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