研究概要 |
生活者の省エネ行動を促進するためのコミュニケーションにおいて,エネルギー消費量の見える化に効果があったとする先行研究は多い。しかし,どのような内容を,どのような受け手に対して実施することがより効果的であるかに関する議論が薄く,単純に情報をフィードバックするだけで人の行動変容を期待することにも限界があると考える。そこで,本研究では見える化内容と受け手との関係性を考慮し,より効果的なコミュニケーション方法を明らかにすることを目的として,エネルギー消費量を実測し,実際にフィードバックして検討を行った。初年度の平成22年度は,エネルギー消費量の見える化に関する国内外の先行研究を行い,仮説の導出を行うとともに,仮説検証のための実フィールドを確保し,エネルギー消費量の実測とともに実際に家庭用エネルギー診断を実施し,コミュニケーションの短期効果の検討を行った。 その結果,コミュニケーション効果を行動実践度など質問紙によって計測した結果から捉まえると,コミュニケーションによって行動変容が生じやすいのは,普段から省エネ行動に対する意識が高く,省エネ行動を普段から実践している受け手であった。そして,このような受け手は,コミュニケーション実施前より,既にエネルギー消費量が小さい傾向があった。行動変容が生じにくい受け手,すなわち普段からエネルギー消費量の大きい受け手は,省エネ行動に対するコスト負担感や家族規範の影響が強いことが示された。またエネルギー消費量の見える化で示す内容として,消費量の過多を示すことは必ずしも重要ではないことも示された。 これらより,普段から省エネ行動を積極的に取り入れているような受け手に対しては,従来から行われているようなコミュニケーション方法で十分な効果があると考えられるが,普段から消費量の多い家庭においては,訴求方法の検討が必要であることが明らかになった。
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